販売者(銀行、証券会社)の説明義務違反

2 ゼロコストに関する説明義務違反
(1)通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)特有の損失拡大について
仕組み債という超ハイリスク商品商品先物やFX取引では、預け入れた証拠金(取引額の一部に過ぎない)を失うことはあっても、それ以上の損失はありません。しかし、通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)では、損失の拡大は無限大といえます。レシオで2倍・3倍の損害額を被り、これに加え、ギャップレート特約等の存在で、さらに損害は拡大します。先物に比べ、通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)ははるかに危険な商品といえるでしょう。

しかも、購入者の損害は、売主であり販売者である銀行にとっては、そのまま利益となるものです。両者のアンバランスは大きいといえます。
(2)ゼロコストという巧妙な仕掛け
このゼロコストは、コールオプションを購入し、プットオプションを売却する事による代金の相殺の結果ですが、被告の担当者は、この点の説明をしていません。それどころか、「ゼロコストで有利ですよ」 とセールストークに利用するのです。
しかし、このゼロコストにより、プットオプションを相手に売りつけるということの意味を理解するチャンスを失い、円高ドル安になった時に初めて、自分には、オプションを行使するかどうかの自由が無くなっている事に気付きます。つまり、購入者は、きわめて重要な事を認識しないまま、購入しているのです。

購入者は、仮にプットオプションの代価を銀行から受け取れば、その代金が何のためのものかを考えるチャンスが与えられ、オプションを売り渡す事によって「銀行の権利行使に対して応じざるを得ない義務」を負うということを認識するはずです。しかし、ゼロオプションになっている事から、その点に気付く事なく取引に入ってしまうのです。そして、いざ、ドル安で損害が出たときになって初めて、それを拒否できない事を知り、慌てるというのが、この為替デリバティブ(通貨オプション・fxオプション)紛争の典型例なのです。

プットオプションは、オプションを売ったので銀行だけに選択権があり、自分には無い、というのがデリバティブの特性ですが、この点は、一般の人が最も理解しにくい部分であり、丁寧かつ念入りな説明を受けなければ理解できない部分です。しかし、銀行は、ゼロコストをいい事にその説明をせず、「ゼロコストで有利ですよ」と、繰り返すのみなのです。

ゼロコストは、銀行にとって、販売促進に便利なだけではありません。このように、購入者にとっては構造的に不利であり、他方、銀行にとっては有利であるという商品特性を気付かせない巧妙な仕組みであり、通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)が本来的に詐欺的な商品であることを示していると言えるでしょう。 もっと端的に言えば、ゼロコストにしないと、購入者に商品の危険性を気付かれてしまい、販売が困難になってしまうのです。だからこそ、ゼロコストにしているといえます。
(3)ゼロコストは銀行のみに有利な仕組み
契約時の為替相場が、例えば115円前後であったとすると、当該商品の行使価格は、107.00円などと設定されます。このように、スタート時から購入者に有利な設定となるのが特徴です。
有利にスタートさせる事は、購買意欲を刺激する効果は抜群ですが、実際は、ここに銀行の本当の狙いが隠されているのです。銀行がレシオやトリガー価格で有利になっている部分の高いオプション料と相殺させることが出来るため、銀行の有利性、つまり、購入者の不利性をカムフラージュできるのです。
銀行にとっては、ゼロコストはこのように二重のメリットがあるといえます。

このように、オプション料は、通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)の機能を理解するための中核を成すものです。ところが、このオプション料は、完全にブラックボックス化されており、銀行は、その具体的な算出方法を明らかにしていません。金融工学を活用しているので、ブラックショールズモデルを活用している事は想像がつきますが、それ以上のことを明かさないのです。もし明かせば、詐欺的な商品の仕組みが明らかになってしまうからなのでしょう。
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M&A・企業再生・民事再生の弁護士-金子博人法律事務所