相続・弁護士 法律相談

相続法の大改正がスタート

第1章 2019年7月1日施行の相続法改正(施行日以降に相続開始したものに適用される)

1.非嫡出子の相続分

 非嫡出子の相続分を、嫡出子の2分の1としていた部分を削除し、同等とした(900条)。
 これは、非嫡出子の相続分を2分の1とする規定を、最高裁大法廷平成25年9月4日判決が違憲としたことをうけ、削除したものである。

2.共同相続と対抗要件

 相続による権利の承継は、法定相続分を越える部分については、登記、登録、その他対抗要件を備えなければ、第三者に対抗できないと規定された(899条の2)。
 従来、判例で求められたものを、明文化したものである。

3.相続分の指定

 相続開始時の遺産に対する債権者は、遺言に相続分の指定があっても、相続分に応じて、権利を行使できる。ただし、債権者が相続分の指定に応じた債務の承継を承認したときはこの限りではないとした(902条の2)。
 これも、従来の判例理論を明文化したものである。

4.贈与、遺贈による配偶者居住財産

 @婚姻期間が20年以上の夫婦は、一方が他方に、その居住に供している建物またはその敷地を遺贈または贈与をしたときは、後に特別受益として持ち戻す必要は無くなった(903条)。
特別受益として持ちものす必要がなくなった範囲で、相続分が増加したという結果となる。
ただ、条文上では、相続分の増加に反対するものが多いことを配慮し、「特別受益の持戻し免除の意思表示の推定」という、奇妙な言い回しとなっている。

 A施行前になされた贈与、遺贈には適用されないことに注意する必要がある。

5.遺産分割前の財産処分

 相続開始後で遺産の分割前に処分された遺産は、相続人全員の同意により、遺産の分割時に遺産として存在するものと見なすことができるとした(906条の2)。
 従来は、遺産の分割前に処分されると分割の対象とできず、別途、民事訴訟等で解決するしかなかったが、今回の改正で、遺産として存在するとできることとなった。そのため、それを処分者に相続させて、その分、他の遺産に対する請求を排除できることとなった。

6.一部分割

 遺産の一部分割が可能であると明記された(907条)。
 従来から、全体から切り離し、一部だけの遺産分割も可能とされてきたが、今回それが明記された。

7.遺産分割前の預貯金債権の行使

 各共同相続人は、遺産の中の預貯金債権について、相続開始時の債権額の3分の1に、各自の法定相続分を乗じた金額については、単独で権利を行使できることとなった(909条の2)。ただし、別途法務省令で、金融機関ごとに、上限を150万円とされている。
 相続が開始すると預金が凍結され、緊急の対処ができないという不便があった。また、最高裁大法廷平成28年12月19日判決が、分割前の預金債権について、従来の分割債権説から準共有債権説に改めたので、預金債権の単独での行使ができなくなった。そこで、これらの不都合を避けるべく、一定の範囲内で預金債権の単独行使を可能としたものである。

8.自筆証書遺言の財産目録(これに限り、19年1月13日に先行施行)

 自筆証書遺言は、全文を自書し、日付を入れて、記名捺印をする必要があったが、添付する相続財産目録に限っては、自書要件を撤廃し、パソコンなどの機械による作製、他人の代筆などが広く許されることとなった(968条)。
 ただ、目録作製に当たっては、目録の各葉(両面の時は、両面)に署名し、印を押さなければならないとされている(前同)。

9.遺留分の抜本的改正(1042条〜1049条)

 @「遺留分減殺請求」でなく、「遺留分侵害額の請求」となり、「減殺」という用語が、条文から消えた。
従来の「遺留分減殺請求」は物権的形成権とされ、対象の相続財産の現物返還が原則とされた。その結果、株式や事業用資産も返還せざるを得ず、中小企業の事業承継のような場合、経営権の争奪に発展しかねない状況となっていた。そこで、今回の改正で、金銭的請求権に純化されることとなった。その結果、金銭的かたちで解決すればよく、経営権に対する影響を排除できる。

 A遺留分を算出するための贈与は、従前は、相続開始前の1年間に限るが、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与したときは、1年前の日より前にしたものも対象とされていた。
今回の改正では、相続人に対する贈与については、1年を10年として、大幅に延ばした。なお、第三者に対する贈与は、従来通り1年を基準としている(1044条)。
この改正は、中小企業の事業承継においては、意義が大きい。株式や事業用資産の譲渡はできるだけ早く後継者の子の承継させることが期待される。譲渡後、10年以上生存できれば、原則として遺留分を侵害しないが、10年以内に亡くなると、遺留分のなかに取り込まれ、価額弁償をしなければならなくなったからである。
ここで、@と合わせてまとめると、事業承継では、遺留分を侵害したとしても株式等の返還はないので経営権に影響を与えないものの、10年以内の事業承継では、遺留分を侵害すれば、価額弁償をさせて、兄弟間の公平を回復しようとすることにより、円滑な事業承継を期待しているといえよう。
事業承継は、譲渡後10年以上生存できるよう、早めにすることが強く期待されていると言えよう。

 B遺留分侵害の回復のためには、前述の通り金銭的請求に限られるが、改正法ではその計算方法が明確にされた(1046条)。
内容は、従来の判例(最三平成8.11.26)を精緻化したものであり、実務的な変更はないと思われるので、省略する。

 C今回の改正では、寄与分と遺留分の関係という、従来からの難問には、答えていない。

 D受遺者または受贈者の負担額については、改正前の1033条から1037条までの条項が整理され、精緻化されている(1047条)。
すなわち、遺贈→死因贈与→生前贈与の順で処理され、複数受遺者、受贈者の間では、それぞれ割合的に負担することになる。

 @遺留分侵害額に対する請求権は、遺留分権利者が、損害の開始及び遺留分を侵害する贈与があることを知ってから1年間行使しないときは時効により消滅する。相続開始から10年を経過したときも同様とする(1048条)。
形成権の行使が請求権の時効にかわっただけで、実質的な変更はない。

 A遺留分の放棄については、実質的な変更はない。

10.特別の寄与の新設

 @被相続人に対して無償で療養介護その他の労務の提供をして、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族()は、相続の開始後、相続人に対して、特別寄与料を請求できる(1050条1項)。
親族に関しては、相続人が除かれる他、相続放棄をしたもの、欠格者・排除者も除かれる。
親族は、民法725条の定めるものなので、具体的には、被相続人の配偶者、被相続人の兄弟姉妹及びその配偶者、被相続人の兄弟姉妹の子及びその配偶者、被相続人の配偶者の連れ子などであろう。扶養義務関係にあるものに限定されていない。
同居は、要件ではない。
療養介護だけでなく、農業や自営業の手伝いという労務も含むが、無償で無ければならない。

 A当事者に協議が整わないときは、家庭裁判所に協議にかわる処分を請求できる。ただし、相続の開始及び相続人を知ってから6ヶ月を経過したとき、または、相続の開始を知ったときから1年を経過したときは、この限りではない(同項)。

 B寄与料の額は相続開始時の財産の額から遺贈の価額を控除した残額を超えられない。また、相続人の負担は、法定相続分の割合による(同4項、5項)。


第2章 2020年4月1日施行の相続法改正

1.配偶者居住権

 @被相続人の配偶者は、被相続人の財産である建物に相続開始時に居住していた場合は、
@.遺産の分割により配偶者居住権を取得するものとされたとき
A.配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき
には、その建物の全部について、無償で使用収益する権利(「配偶者居住権」を取得する。
ただし、相続開始時に、建物が配偶者以外のものと共有されているときはこの限りでない(1028条1項)。

 A居住権を取得した配偶者が居住建物を取得すると混同で居住権は消滅するはずだが、その後、他の者が共有持ち分を有するときは、居住権は消滅しないとみなされる(同上2項)。

 B婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が死亡した場合、生存配偶者に配偶者居住権を遺贈したときは、建物またはその敷地を遺贈したときの規定である904条4項を準用し、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定される(同3項)。
死因贈与契約は遺贈の規定を準用する(民法554)ので、同じく、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定される。

 C遺産の分割請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が居住権を取得する旨を定めることができる。
@.共同相続人間に、配偶者が配偶者居住権を取得することについて、合意が成立している場合。
A.配偶者が家庭裁判所に配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益を考慮しても、なお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めた場合

 D配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身とする。ただし、遺産分割協議、遺言の定め、または、遺産分割の審判のおいて別段の定めをしたときはそれに従う(1030条)。

 E居住建物の所有者は、配偶者居住権設定の登記を設定する義務を負う(1031条)。

 F配偶者居住権は、譲渡することができない(1032条2項)

 G配偶者は、従前の用法に従って、善良な管理者の注意義務をもって使用・収益をする義務を負う。ただし、居住の用に供してこなかった部分について、居住の用に供することをさまたげない(同条1項)。
配偶者は、所有者の承諾無く、改築もしくは増築をし、または、第三者に使用・収益をさせることができない(同上3項)。
配偶者がこれらに違反し、相当の期間を定めた是正勧告に従わないときは、所有者は配偶者居住権を消滅させることができる(同上4項)。

 H配偶者は、使用・収益に必要な修理をすることができる(1033条1項)。配偶者が必要な修理を相当な期間内にしないときは、所有者はその修理をすることができる(同上2項)。

 I配偶者は、居住建物の通用の必要費(固定資産税や通常の修理費など)を負担する。特別の必要費(風水害による修理費など)や有益費(リフォーム費用など)は所有者の負担であるが、生存配偶者が支払った場合には所有者に対して償還できる(同上2項による民法582条2項の準用)。

2.配偶者短期居住権

 @被相続人の財産に属していた建物に、相続の開始時に無償で居住していた配偶者には、相続の開始と同時に配偶者短期居住権が成立する。これは、遺産分割により居住建物の帰属が確定した日、または、相続開始の時から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日まで存続する(1037条)。

 A配偶者短期居住権は無償だが、相続分として扱わない。

 B配偶者は、従来の用法に従う義務と善管注意義務を負い、収益権は無い。また、譲渡はできない


第3章 2020年7月10日施行の遺言書の法務局保管

1.遺言書の保管

 @民法の改正とは別立てで、法務局による、遺言書の保管等に関する法律が制定された。
これにより、自筆証書遺言は、本人確認と遺言書の方式の審査をした上で、所定の手続きにより、法務局に保管できることとなった。

 A法務局による保管された遺言書は、検認手続きは不要となる。



相続トラブルの原因

第1章 親の介護は相続争いの種になりやすい

 弁護士事務所の相談に来る相続トラブルのうち半数は親の介護に起因するといっていいほど、親の介護は相続紛争を惹起しやすい。
 親が長生きすればその介護は不可避であるが、兄弟姉妹のうちだれが負担するかが問題である。介護を引き受けた者とそうでない者との間で、どうしても不公平感が生じる。
 親を引き受けた者は特別の苦労と出費を強いられるが、この苦労を他の兄弟が認識していないことが多い。其の結果、親が死んだあと、介護をした者はその負担を遺産分割の中で考慮することを求めるが、他の兄弟はそれを無視しようとするので紛争となるのだ。
 逆の事態もある。親と同居していると、親が身近にいることから親から資金援助を受けることが多く、また、相続に備えて自分に有利な遺言書を書かせようとすることも多い。親は面倒を見て欲しい一心から、介護をしてくれる子のために積極的に有利な遺言書を書いたりもする。こうなると、逆に一人だけ有利な立場になる。さらに、有利な遺言書を書かせるために、積極的に親を引き取ろうとして、兄弟と揉めることもある。
 また、親を引き取った後に必ずしも親と上手くいくとは限らず、親を引き取ったのにろくな介護をしなかったと非難されることも多く、こうなると相続に絡まった利害関係は複雑となり、深刻な相続争いの原因となるのだ。

<対策>
介護するに当たっては、だれが引き取り、誰がどう費用負担するか、法定相続人間でよく話し合っておくことが望ましい。相続開始後の分け方も事前に兄弟間で話し合っておいて、その結果を親に納得してもらい、それを織り込んだ遺言書を書いておいてもらうと効果的である。

第2章 財産が多くても少なくても揉める

財産の少ない場合
 財産が、親の住んでいた土地・建物が主たるものという場合、これを売って現金で分ければよいが、ここに長男が住んでいて売却に応じないということも多い。この場合、長男が代償金として他の兄弟の持ち分を買い取ることが出来ればよいが、それが出来ないと紛争になる。

<対策>
この事態は予想できるので、長男は代償金の資金を予め用意するか、その時点で他に転居する用意をしておく必要がある。

財産の多い場合
 財産が多くても、揉めることは多い。不動産でも魅力あるものは、皆同じ考えであることが多く、取り合いになる。
 親が財産管理していればよいが、生前から管理は長男が代わって行っていることも多い。この場合、長男の都合で売却してしまったり、貸したり、ビル化したりする。その間に、売買代金が行方不明となっていたり、管理方法に他の兄弟が不満を持っていることも多い。となると、後からもめることは必定である。財産が多いだけに、深刻な相続争いになることも多い。

<対策>
財産が多い時は、遺言書を残して争いを事前に防止するというのが親の義務と言うべきである。内容が適格であれば、争いを未然に防止できる。
しかし実際は、遺言書があることは多くはない。遺言書の必要性はもっと啓蒙されるべきであろう。

第3章 寄与分・特別受益は揉めやすい

 寄与分は、相続人の一人が遺産の形成・維持に寄与した場合であり、寄与分は寄与者が別枠で相続することとなる。
 特別受益は、法定相続人の一人が親から特別の贈与を受ける場合であり、その分は遺産から差し引かれることとなる。
 問題はこれらの有無の判断とその額の算定である。寄与したと主張しても他の相続人がそれを認めなかったり、特別受益があると主張しても受けたとされる者がそれを認めないということは多い。立証は困難なことが多く、深刻な紛争となる。

<対策>
寄与分、特別受益の主張は事前に予想できるはずである。主張したい者も、防御しなければならない者も、予め証拠資料を集めておく必要がある。

第4章 父親が違う・腹違い・非嫡出子というのは紛争の種

これらの場合は、平和に解決できればラッキーと言うべきである。

<対策>
切り札は遺言書である。遺言書の作成をしておくことは親の義務である。
遺言書の無い時は、話し合いをするとますますこじれるということも多いので、早めに専門家に調整を頼んだ方がよいであろう。


当事務所は、「相続対策総合センター」と提携し、隣接分野の専門家とともに、総合的な対策と解決が図れるようになりました。
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相続対策は、できるだけ早い段階から行うほど効果が高く、対策期間が長いほど有効な対策が立て易いのです。具体的には、誰が相続人になるか、その法定相続分はどのくらいかを確認したうえで遺言書を作成すること、また、相続税がどのくらいになるかを概算し、どのように納税するかを考えながら、節税対策を講じることも必要です。1次相続のみならず、2次相続やその後の相続人の生活等を総合的に考慮して、長期的視野に立って対策を講ずる必要があります。これらの事を踏まえ、相続に関する法律相談は、専門の弁護士にご相談することをおすすめ致します。

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  1. 相続人は?
    通常は、相続人はすぐわかるはずですが、現実には亡くなった方に隠し子がいて認知していたとか、小さい頃に養子に出された兄弟姉妹がいたということもあります。 念のため被相続人の戸籍謄本を取り寄せて、相続人が誰なのかを確定させましょう。
  2. 遺言書はありますか?
    遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。遺言書の有無を確認し、遺言書がある場合にはその遺言書に従って財産の分割をしましょう。遺言所を無視して、遺産分割しても、無効です。
  3. 財産と借金の内容を確認しましょう
    亡くなった方の財産と借金を確認しましょう。相続税の申告書を提出した場合には、税務署がその相続税の計算が正しいかどうかを調査に来る可能性が高いです。そのときに隠し財産などがないようにしましょう。
  4. 遺産分割協議をしましょう
    (1)基本は、民法で定められた法定相続分です。遺産分割の方法は現物分割、代償分割、代物分割、換価分割 、共有分割があります。(2)相続人の間で遺産の分割が確定したら、遺産分割協議書を作成しましょう。
  5. 財産の評価をしましょう
    必要があれば、専門家(不動産なら不動産鑑定士など)に依頼しましょう。合理的な分割ができるし、相続税の節税できる場合もあります。
  6. 相続税の申告をしましょう
    亡くなってから10ヶ月以内に申告書の提出と納付をしなければなりません。それまでに遺産分割ができなければ、仮の申告し、相続税を納付する必要があります。

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