著書:弁護士がこっそり教える「社長のM&A学」

はしがき「本書を世に問うにあたって」

中堅・中小企業の経営環境は厳しい。国内マーケットが縮小していく中で生き残るためには、単なる経営努力では困難となっている。多くの企業は多角化するか、技術転移をするか、海外展開をするなどの努力が求められている。そのときにM&Aは必須のスキルである。
事業が行き詰ったときに、事業を再生・再建するための効果的な手段としてもM&Aがある。今、後継者がいなくて悩んでいる中小企業は多い。そのときに思い出してほしいのもM&Aである。
M&Aは、今の停滞した日本経済を「変える」大きな力を持っている。経営者には、M&Aを企業発展の重要な選択肢として、その活用を考えてほしいものである。

とはいえ、M&Aは決して易しいプロジェクトではない。慎重な交渉と的確なスキーム作りが求められている。ところが、M&Aを直接規律する法令はなく、また、仲介者には資格は不要であり、業法も監督官庁もなく、全く「野放し状態」である。
M&Aでは、売り手と買い手の利害は全く相反する。にもかかわらず、M&A業者が平然と両社を代理し、それによって利益相反、双方代理が横行しているという現状が目に付く。しかも中堅・中小企業には、M&Aに的確に対応できるスタッフは稀である。
その結果、中堅・中小企業は、M&Aを使いこなしているとはいえず、十分な成果を得ている状況ではない。
本書は、このような現実の中で、中堅・中小企業も大胆にM&Aを活用できるよう、そのために必要な知識とハウツウをまとめたものである。

第1部では、M&Aの活用方法と、それを実現するスキームを様々の視点から検討した。ことに、後継者がいないときのスキーム作り(第2章)と、事業の再生・再建のためのM&A(第3章)には、力を入れた。
第2部では、M&A自体大きなプロジェクトであることから、それを成功させるべき手順と価格設定を説明するとともに、施工するための失敗例の検討、さらに上場している中堅企業のために敵対的買収から身を守る方法、最後に契約書のモデル文例を整理して、実践的な総合的な検討を試みた。

私は弁護士として、中堅・中小企業の経営者を直接支援し、経営の拡大、企業の再生・再建、事業承継などをアシストしてきたが、その一環としてM&Aを重要な手段として活用してきた。この中で積み上げた知識と経験を、かように2部に分けて整理してみたものである。
中堅・中小企業の経営者や実務担当者は勿論、彼らをサポートする公認会計士、税理士、弁護士などの専門家のほか、M&Aのアドバイザリーを手がけている実務家の方々にも、ぜひとも役立ててほしいと祈っている。
これが停滞した日本経済を「変える」ための原動力の一環として、何がしかの役割を果たせば望外の幸せである。

私が長く会員となっている一般社団法人日本中小企業経営支援専門化協会(JPBM)では、約5万社ある会員のクライアントに対し、今般、M&Aを活用した経営支援を開始した。本書は、そのための資料としてこの活動を側面からバックアップすることも目指している。
本書を出版するにあたり、このJPBMのスタッフの方々には貴重な助言と協力をいただき、また、中央経済社のスタッフの方々、ことに長野かほる氏には本書をまとめるための貴重なアドバイスをいただいた。ここに感謝の意を表させていただくものである。

弁護士 金子 博人

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