販売者(銀行、証券会社)の説明義務違反

1 情報を操作し、独占的に保持している者としての説明義務違反
(1)売主銀行の情報提供における優位性
金利スワップという危険商品通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)は、銀行(または証券会社)と購入者が相対取引を行なうものであり、一方が利益を上げれば、他方が損失を被るという、利益相反が生じる典型的な商品といえます。しかも、相対取引の相手が自ら商品を設計し、かつ、取引相手に自ら売りこむという特殊な商品構造と販売方法を持ちます。
そして銀行は、設計段階において、デリバティブ商品(金融派生商品)として、金融工学を駆使して自己に有利に仕組むこととなるのです。

また、銀行は、日々の為替ディーリングの中で、顧客との通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)に対応するカバー取引を行なっており、プットオプションを行使するまでもなく、通貨オプション・fxオプション取引(為替デリバティブ)を締結した段階で、すでに利益を上げているはずです。

かくして、情報量は売主銀行に100%集中しており、商品の具体的特質はブラックボックス化しているといえます。売主本人に情報を開示してもらわなければ、購入者は、その商品の特質、ことにリスクは検討しようがないのです。つまり、購入するかどうかの判断は、売主銀行に全面的に依存している状況なのです。
したがって、銀行は情報をコントロールし、排他的・独占的に保持していますが、他方、購入者の保持する情報はゼロに等しいという関係にあります。銀行の「専門家責任」が、きわめて重いケースです。
(2)購入時におけるリスク情報取得の重要性
為替デリバティブ(通貨オプション・fxオプション)における実際のリスクは、その時点での為替相場の動向・日米の金利差等を前提に、金融工学を駆使して決まるものです。しかし、購入時に必要な情報はそのような情報でなく、購入の是非を判断するに必要なだけの説明があればよいのであり、それをすべきなのです。
そのためには、まずは、1ドル85円ならどうか、80円ならどうか、78円ならどうなるか、といったサンプル例を基に説明すべきです。そうすれば、大きなリスクが生じる事が確認でき、そのときに、自分がそのリスクに対して適切に対処できるのかどうか、の判断が出来たはずですが、そのような情報提供は全く無かったのです。

このようなサンプル例を提示することは、販売時にオプション料を瞬時に算出できる被告にとっては、きわめて容易なはずですが実行しないのです。なぜなら、そのような事をすれば、顧客の購買意欲を大幅にそぐ事になるからでしょう。

いずれにしても、最も大事なのは、円高ドル安に振れ、損害が際限なく拡大して離脱したいとき、いかなる解約損害金が発生するかの情報です。これは、その商品を買ってよいかどうかを判断する最大ポイントとなるはずです。この点は、さらに後述したいと思います。
(3)購入側の自己責任について
金融商品購入にあたっては、購入者に対し、「自己責任」をいわれることが多いですが、情報がブラックボックス化されている場合、少なくともその範囲内では、購入者の「自己責任」などありえないものといえます。

このことに対しては、ブラックボックス化していることに気付くべきで、それでも敢えて買ったのだから、自己責任を負うべきだという再反論が出そうですが、通貨オプション・fxオプション(為替デリバティブ)では、わざわざゼロコストにして、購入者の関心がリスクに行かないようにする工夫が凝らされているのです。この点は、次に述べたいと思います。
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