弁護士金子博人のエッセイを、雑誌Lawyersに連載中
知財関係について提携しています。
<1.基礎知識>
外国子会社配当益金不算入
資本参加免税
※日本は、非居住者(法人含む)について、日本国内で発生した所得に対して源泉税を課している。 配当(非上場)、利子収入、組合からの配分は、20.42%である。 不動産の譲渡は、価格の10.21%(価格が1億円未満で、個人の買い主が自己または親族の居住用に買う場合を除く)
支払利子の損金算入規制、源泉税
過小資本税制
タックス・ヘイブン税制
移転価格課税
租税条約
「過大支払利子税制」の導入
「国外転出時課税」の導入
<2.買収スキームの基本>
M&Aの基本的手段は、株式の買い取りであるが、事業譲渡を選ぶべき時もある。クロスボーダー買収の時は、それ特有のチェックポイントがある。まず、選択の一般的なポイントは、以下のとおりである。
事業譲渡の場合(事業譲渡では、ターゲット=売り主である)
(1)買い手側 デメリット:個々の財産や契約上の地位の移転が必要。 財産権の移転は、登記・登録という対抗要件の確保が必要。 契約上の地位の移転は、第三者たる契約相手の同意が必要。 許認可は引き継げないので、取り直す必要あり。 繰越欠損金を引き継げない。 取引税、無形固定資産に源泉所得税がかかっている可能性がある。 メリット :簿外債務を承継しない。 税務リスク引き継がない。 (2)売り手側の論点 個別の財産の譲渡益に、譲渡税がかかる可能性がある。 残存の法人をいかにするか? 清算? 縮小して継続か? 清算する時、債務超過では破産で処理せざるを得ない。 (3)事業譲渡の時、源泉所得税負担に注意。 無形固定資産の譲渡対価に源泉所得税が課されることあり ・事業譲渡の時、取引税に注意 例:不動産取得税、登録免許税、消費税、印紙税などの間接税に注意 売り主、買主どちらかにかかるか?
株式譲渡(売り主とターゲットが異なる)
株式の譲渡益に、譲渡税がかかる可能性あり
上場企業は、株式の市場価格が基本である。
非上場企業の場合、評価替え後の純資産+のれん(営業利益の2〜5年分?)が基本。
買収側は、税引後利益で買い取り資金を何年で回収できるか? を考えるべきである。
暖簾が発生する時、日本は、20年以内で償却する。しかし、国によって償却条件が違う。償却出来ない国もあることに注意すべきである。
<3.M&A資金のファイナンスでの注意>
デット・プッシュ・ダウンとは
デット・プッシュ・ダウンの例(借り入れをビークルに移転)
ターゲット国に、合併や連結納税が無い場合、ビークルなしで、中継国からターゲットに貸し付けると、ターゲットで利子を損金算入。
デット・プッシュ・ダウンが難しい例
ターゲットに、財務諸表上認識されない多額の営業権がある時は、難しい。 中継国によるターゲット買収は多額となるが、ターゲットの配当可能利益は帳簿上認識されている利益に限られるし、中継国からターゲットへの貸し付けは、返済が配当可能限度額となるのが上限。従って、配当可能利益が少ない時は、中継国から十分な借り入れの移転ができない。
ex. ファンドが、タックス・ヘイブン持ち株会社の売却を提案してきたときどうするか?
<4.統合プランニング>
持ち株会社の機能
持ち株会社設置国の望ましい条件(中継国に望まれることのほかに)
持ち株会社へ子会社たる外国法人の株式の移転
サプライチェーンの目的
サプライチェーン構築時の税
<5.移転価格課税の回避>
移転価格税制は、所得税の安い国の子会社に利益を集中させて、課税を回避して利益を残すことを防止する制度である。 しかし、重要な機能、リスク、無形固定資産(特許権、製造ノウハウ、マーケット・インタンジャブル《ブランド価値、顧客リスト、販売ノウハウなど》)が集中しているところに利益を集中させても、リスクや資産等に比例していれば、移転価格税が課税されることはない。
受託者たる製造会社は、委託者の指示と管理に従い、委託者の有する特許や製造ノウハウ等を利用して製品を製造。利益もリスクも製造委託者に集中し、連結実効税率を下げる。 →利益の多くを委託者たる事業統括会社に帰属させても、移転価格税制に抵触しない。
利益の多くが委託者に帰属させても、移転価格税制に抵触しない。
※コミッショネアと類似の方法として、LRD(Limited Risk Distributer)を制度化している国も多い。 委託者が、販売戦略の立案をする。売却時に所有権が販売者(LRD)に移転する。売掛金が貸し倒れだと仕入れ代金が免除される。受託者においてリスクが制限されるので、利益を制限できる。 →委託者に利益を集中しても、移転価格税制に抵触しない。