第4次産業革命 IOTの戦略

<第二回> インダストリー4.0 日本の製造業は世界の下請けになってしまうのか?

第1.コンチネンタルが自動運転の覇者か?

 ドイツ社会は一見保守的に見えるが、日本人が思っている以上に多様性がある。インダストリー4.0とは関係なく、いつの間にかドイツのコンチネンタルが、自動運転では突出した技術力を獲得してしまった。アメリカのGoogleに対抗できるのは、もはやここしかないのではなかろうか。
世界第4位のタイヤメーカーにすぎなかったドイツのコンチネンタルは、現在、自動運転の核心である車載レーダ―市場で40%のシェアを占め世界トップであり、総合力でもボッシュに次ぎ、世界第二位の部品メーカーとなっている。
ダイムラー、VW,ボルボのほか、日本のトヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、富士重工、三菱が同社のセンサー類を導入している。さらにグーグルへも主要部品を提供しているが、この点は重要だ。グーグルでさえコンチネンタル抜きで、自動運転は実現できないのだ。まずは、同社が自動運転の主要技術を支配したといえよう。
今は、コンチネンタルはeHorizonを展開している。車両単体のセンサーだけだと、数百m先の情報しか得られない。そのため、自動運転のためには3次元の地図情報等が必要となるのだが、決定的に重要なのは、先行する他の車から即時的な情報を得ることだ。それを実現するには、世界中の自動車メーカーを囲い込む必要がある。これに成功すれば、自動運転の「標準」を取れるといえよう。eHorizonは、これを実現しようとするもので、まさに、同社は自動運転の覇者に大手をかけたといえよう。
すでに、世界中からeHorizonの参加者を募っており、ドイツ国外では、日本の2社、米国2社が基本合意済みといわれ、「囲い込み」は完成に近いといえよう。
ただ、eHorizonのクラウドは、米IBMのそれだ。アメリカの底力は凄い。だからこそ、前回で紹介したとおり、ドイツとアメリカが提携することになるのだ。
さて、コンチネンタルをみると、インダストリー4.0で覇者になるにはどうしたらよいかがわかる。同社は、1998年、米国の製造コングロリマリットであるITTインダストリーから、ブレーキシャシー部門(電子制御によるシステム)を19億3000万ドルで買収したのが始まりで、その後、独シーメンス、米モトローラからを含め、15年間
で100社を買収した(日本では日本電産が活発にM&Aを実行しているが、その4倍にあたる)。
コンチネンタルの役員構成にも注目すべきであろう。CEOのデゲン・ハートは、買収された企業の出身である。他の役員を見ても、役員9名のうち生え抜きは2名である。日本では、このような企業は聞いたことがない。同社躍進の秘密がここにあるといえよう。
そして、同社は年間1000名のソフトのエンジニアを雇用している。自動車の部品メーカーは、もはやITのトップ企業でもある。自動運転を実現するには、それくらいの努力が必要なようだ。

第2.自動車メーカーが下請けとなるのか?

 自動運転の時代は、車がインターネットとつながり、情報端末となる。すでにテスラが行っているように、最新のソフトをダウンロードして性能向上をはかれるし、ビッグデータを発信して、サービス会社から故障予測のフィードバックをえられる。車は、配送先で自走ロボットと連動したり、スマートハウスや、スマートシティとも繋がり、車の役割は、激変するであろう。
ネットの中では、車はこのように情報端末として重要な役割を果たすが、車自体は、走るデバイスにすぎなくなる。となると、従来の車メーカーは、単に動くデバイスを製造するメーカーでしかなくなる。主役は、自動運転のシステムを統括するものであり、車にネットを通じてサービスを提供できるサービス会社となる。要するに、自動車メーカーは、単なる下請けとなる運命にあるといえよう。
自動運転の覇者に躍り出たコンチネンタルは、典型的な部品メーカーである。インダストリー4.0では、このように、システムを統括する部品メーカーが主役となるであろう。
ところで、車一台で部品点数は2〜3万点といわれるが、インダストリー4.0では、これを100〜200個のモジュラーにまとめることが求められている。
そして、カスタマイズのために、販売店が顧客の要望を集約し、部品メーカーとネットでやりとりしながらモジュラーの組み合わせで、顧客の要望に応える製品を構成することとなる。完成品メーカーは、販売店から注文を受けて、製造するだけである。ただ、カスタマイズに対応するため、他品種少量生産が可能な生産ラインを用意していなければならないが、いずれにしても、インダストリー4.0の中では、完成品メーカーは下請けとなり、販売店と部品メーカーが主役となるはずである。
ところで、ドイツは、もともと部品メーカーの力が強い。部品メーカーが、完成品メーカーに提案することも多く、下請け意識は無いようだ。ところが、日本では、一次下請け、二次下請け、三次下請けという言葉があるように、部品メーカーは、完成品メーカーに従属している。
なぜこのようになったかであるが、自動車業界でみると、ドイツの部品メーカーは、トップのボッシュにしても、株式を上場していない。独立を保ちたいからだ。上場している
と、完成品メーカーに株を握られ、下請け化してしまうのだ。
他方、日本では、部品メーカー大手は、逆にほとんど上場している。そのため、株を握られ、系列化するのだ。
ところで、自動運転のための投資額は膨大となる。ボッシュやコンチネンタルは、自動運転のため大型投資をしても、それを、国の内外の自動車会社に販売して、開発投資を回収できる。ところが日本の部品メーカーは、系列化して、他に販売ができないので、大型投資ができなくなる。あとから回収することが困難だからだ。
日本が自動運転で、大きく出遅れてしまった原因の一つがここにある。

第3.日本のメーカーは自動車の総需要半減に対応できるか?

 自動運転は、世界レベルで、その実現に向かって苛烈な競争状態となっている。
自動車関連業界では、さらに、大きな動きがある。それは、Uberに代表されるライド・シェアリングの登場である。
日本はUberを「白タク」として拒絶しているが、これは極めて例外で、日本以外の大都市に行けば、スマホでいつでもどこでも、Uber車を呼べる。2008年にシリコンバレーで誕生したUberは、すでに時価総額は6兆円達する巨大な世界企業に発展しているし、類似のサイトも、世界中で多数誕生しているのだ。
シェアリング・エコノミーは、「資本財を遊ばさない」というコンセプトのもと、シリコンバレーで、インダストリアル・インターネットと同時期に誕生した。ライド・シェアリングのほか、民泊のAirBnBなどが、世界中で盛んに利用されている。
さて、実は自動運転にこのライド・シェアリングが加わることにより、車の総需要は40%減少すると言われているのだ。
さらに、電気自動車の時代となると、テスラだけでなく、アップルを始め多数のプレイヤーが参入してくるはずである。電気自動車は、構造がシンプルとなり、新規参入しやすいからだ。現に電動バイクの世界では、ホンダやヤマハを押しのけるように、中国のベンチャー企業が、雨後のタケノコの如く誕生している。バイクと自動車では部費の点数が桁違いで、単純には比較できないが、電気自動車の時代となれば、中国や台湾からのベンチャーによる参入は、覚悟しなければならないであろう。
となれば、従来のクルマ関連メーカーは、自動運転や電気自動車のイノベーションに迫られるだけでなく、市場の急速な縮小と、新規参入者に備えなければならないのだ。まさに三重苦である。しかし、その対応に失敗すると、後進国の追い上げに破れた日本のエレクトロニクスの二の舞となるであろう。
世界の自動車メーカーをみると、マーケットの縮小に対し、すでに対策をたてているようだ。
GMは、2016年1月、Uberと競合するLiftとSidecarへ出資し、カーシェアリングに進出すると発表した。車業界の将来を見越して、逆張りの多角化というところであろう。
Liftの設立は2009年だが、売り上げ規模はUberに負けないという。車メーカーの経営資源の移転先としては、充分な規模がある。
フォードは、2011年から、カーシェアリング大手のジップカーと提携し、学生向けカーシェア車両の最大供給者となっている。それに加え、自社でも、乗合仲介サービスを開発しているという。
ドイツでも同じ動きがみられる。例えばダイムラーは、サ−ビス産業を起こし、総合モビリティ企業を目指しているようだ。カーシェア、駐車場シェア、タクシー配車サービス等の子会社を設立し、長距離バス、鉄道、リムジン送迎、レンタカーなどに進出することを目指しているという。
米、独メーカーは、このように、経営資源をカーサービスの分野に移転することに真剣に取り組んでいるが、日本のメーカーの対応はどうだろうか。
近時トヨタがUberに出資すると発表したが、そもそも日本では、国交省とタクシー業界が、Uberを「白タク」扱いして追い出してしまったので、車メーカーが経営資源を移すべきライド・シェアリングの分野が、日本には存在しないのだ。日本の自動車業界の将来が心配である。マーケットの急減に対応できるのだろうか。

第4.インダストリー4.0で部品メーカーは半減する!

 車の総需要は、40%減ることは今述べたが、問題はそれだけでない。インダストリー4.0の中で、日本では部品メーカーの半分が消滅すると思われる。
インダストリー4.0での競争は、カスタマイズ化と納期の短縮、開発期間の短縮が主戦場である。そのためには、IOT対応だけでなく、モジュラー化が必須である。さらに、GEが目指しているように、3Dプリンターを高度化し、溶接個所を5分の1にして耐久力を5倍とするような部品点数の圧縮という競争が激化することになる。
これは、部品業者同士が提携ないし統合する必要のあることを意味する。
また、インダストリー4.0の第一歩はIOTであるが、そのためには、メーカーとIT業者が、提携ないし統合することが必要となる。
これらが進めば、日本の部品メーカーは必然的に急減するであるし、時代の流れに乗り遅れたものは、淘汰されるはずだ。その結果、部品メーカーは、半減するはずである。インダストリー4.0は、まさに、「総合格闘技」の世界である。
部品メーカーは、生き残りの対策を早めにたて、それを実行してほしいものである。


M&A・企業再生・民事再生の弁護士-金子博人法律事務所