事業継承

4 納税資金、相続代償金確保のための対策

事業承継者は株式を優先して相続するが、それ以外の遺産を取得できないか、出来ても少額なことが多く、そうなると、他の相続人への代償金、あるいは、納税資金がなく、困ることが多い。
ここで、納税資金、代償金を確保することを検討しよう。

(1)自己株式買い取りの利用
  1. 前述の通り、会社が株式を合意で買い取る方法がある(会社法156条)。
    総会で特別決議を得る必要がある(当人は、議決権はない)。この時、他の株主には、同じ条件で買取請求権がある。
    ただし、会社の分配可能額が上限であり、含み資産が多いと、分配可能額よりも株価が高いこともある。この時は、一部資産の売却が必要なこともある。
    売却代金のうち、利益積立の部分に対応する金額は、原則として、配当として総合課税となる(最高50%)。しかし、次の特例がある。
    相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例

  2. 「非上場の相続株式を自社に売却した場合の課税の特例(所得税)」
    相続税の申告期限から3年以内であれば、配当課税(最高50%)に代えて、譲渡益課税(住民税を含めて20%、取得費加算の特例を使える)が適用される。「非上場の相続株式を自社に売却した場合の課税の特例(所得税)」である。

  3. 相続税を取得費に加算する特例
    相続により取得した株式を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すると、相続税額のうち一定金額(株式を売った人にかかった相続税額のうち、譲渡した株式に対応する額)を譲渡資産の取得費に加算することができる。
    この特例を受けるためには、相続の開始があったことを知った日の翌日から起算して10ケ月以内に、相続税の申告と納付を行っている必要がある。
    相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

  4. 定款の定めにより相続人からの株式買い取り
    定款で定めれば、株式が相続された場合、相続人から会社が一方的に買い取ることができる(同法174条)。
    この時は、他の株主に、株式買取請求権はないので、使い勝手は高い。 詳細は前述した。
(2)持ち株会社設立
銀行が良く提案する方法である。会社の後継者である長男が会社を設立し、社長が所有する自社株を、同社が社長から買い取る。
自社株を売却することで社長の相続財産から外れる。自社株には相続税がかからないため、相続税対策になる。この時、銀行の融資を受けることとなる。
この処理では、社長の資産に株式の対価が入るので遺産処理は楽であるが、長男の会社は、借り入れの返済の負担が発生する。
得になるかどうかは、よくシミュレーションする必要がある。
(3)株式の物納可能
非上場株式も物納可能である。納税資金が無い時の緊急手段である。
ただし、優良企業では、金庫株として会社が買えるので、自社株も換金可能と判断され、物納が認められないこともあり得るので注意が必要。
(4)生命保険の利用
生命保険は、納税資金確保などに活用される。保険料分は、相続財産の減少となる。
基礎控除が、一人500万円あるので、節税効果もある。
利用される保険のタイプもさまざまである。次に典型例を示そう。
@ 契約者は会社、被保険者は社長または役員、受取人は会社のタイプ
退職金の財源、あるいは相続人からの自社株式買い取り資金に使える。
A 契約者及び被保険者は社長個人、受取人妻または子のタイプ
納税資金に使える。
*最近は、二回の相続を想定した保険商品など、バラエティのある商品が登場しているので、研究の余地があるものである。
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